特別永住者とは?
外国人が日本で居住するためには、「在留資格」が必要とされています。
在留資格は、外国人が日本で暮らしたり働いたりする際に必要となる許可制の資格のことで、在留資格なしには日本に滞在することはできません。
日本にはその目的によって様々な在留資格がありますが、その中でも少し特殊な在留資格が「特別永住者」となります。
平成3年(1991年)11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」という法律により定められた特殊な在留資格となり、対象となる方は、次のとおりとなっています。
- 第二次世界大戦以前より日本国民として日本に居住していた外国人の方で、サンフランシスコ平和条約により日本国籍を失った方々
平和条約による国籍喪失者が、韓国籍・朝鮮籍・台湾籍となっていたことからこれらの国の方々の割合が非常に多くなっています。
また、特別永住者の子孫もその対象となりますので、両親のどちらかが特別永住者であった場合、特別永住者となることができます。
そのため、特別永住者の韓国人と他の国の方が結婚した場合などは、その子も特別永住者になることができるため、特別永住者の中国人やアメリカ人などもおられます。
帰化申請(特別永住者)の優遇措置
特別永住者の帰化申請は、他の在留資格の帰化申請よりも様々な点で優遇措置がとられており、一部の提出書類や手続きが免除されています。
簡易帰化
帰化の要件が緩和される条件の一つに「日本で生まれた者で引き続き3年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの」という条文があります。
外国籍の方であっても日本で生まれ、継続して3年以上住んでいれば、帰化申請ができるということになります。
多くの場合、特別永住者の方は該当することになるため、住所要件が緩和される「簡易帰化」での申請が可能となります。
⇒詳しくはこちらのページをご覧ください。 3種類の帰化申請の違いとは?
動機書
帰化申請では、帰化を考えた理由や動機を申請者の直筆で記載する「動機書」という書類の提出が義務付けられていますが、特別永住者は不要とされています。
在勤給与証明
会社員の方が帰化申請を行う場合、勤めている会社から「在勤給与証明」という書類を発行してもらう必要があります。
その会社に勤めている期間や給与額を証明する書類となりますが、特別永住者の場合は免除されており、直近1か月分の給与明細を提出すればよいとされています。
卒業証書
帰化申請では最終学歴の卒業証書又は卒業証明の添付が必要となっていますが、特別永住者の場合は提出が免除されています。
納税証明書
会社経営者や個人事業主の帰化申請の場合、法人税(所得税)・消費税・事業税の納税証明書を添付する必要があります。
通常であれば3年分が必要となりますが、特別永住者は2年分でよいとされています。
面接時の配偶者の同行
配偶者がいる方が帰化申請を行った場合、面接時に配偶者の同行を求められることとなります。
申請者の面接に合わせて、配偶者にも簡単な聞き取りが行われるのですが、特別永住者の場合は、面接時の配偶者の同行は不要となっています。
海外出張の期間や審査期間について
特別永住者の帰化申請の場合、その他の在留資格の方よりも総じて審査期間が短くなっています。
また、一年のうちに海外への出張期間が長い場合などで居住要件を満たすか微妙なケースでも、特別永住者であれば申請可能、それ以外の場合は申請不可と判断されることも多くあります。
ただし、これらについては、申請者ごとの状況にもよりますので、ケースバイケースということになるでしょう。
次に特別永住者の中でも特に多い韓国籍の方にスポットを当てていきたいと思います。
韓国の家族関係登録制度
韓国の戸主制廃止によって、代わりとなる法律「家族関係登録等に関する法律」が2007年4月27日に制定され、2008年1月1日より施行されています。
家族関係法によって、個人ごとの各種証明が発行されるようになり、従前の戸主制の「戸籍謄本」は、現在は「除籍謄本」として発行されることとなっています。
証明書の種類と除籍謄本
各証明書や除籍謄本は、日本にある韓国領事館で取得することが可能ですが、取得するためには、韓国本国の本籍地の情報が必要となります。
現在、日本政府から発行されている身分証明書である「特別永住者証明書」には韓国の本籍地の記載はありません。
※過去に発行されていた「外国人登録記載事項証明には韓国の本籍地が途中まで記載されていました。日本でいうとことの「区」まで。取得するためには、「町」までの情報が必要です。
本籍地がわからない場合は、両親や親族に確認したり、閉鎖外国人登録原票を取り寄せる必要があります。
特別永住者の韓国籍の方の帰化申請に必要な各種証明は次のとおりとなっています。
基本証明書
基本証明書は、家族関係登録簿の基本になる証明書となり、申請者ごとに添付が必要となっています。
本人の基本的な登録事項である登録基準地・姓名・性別・生年月日・住民登録番号のほか、出生・改名・国籍喪失・取得・回復・死亡などが記載されています。
家族関係証明書
家族関係証明書は、本人と家族の身分事項を証明するための証明書となっており、申請者自身と両親のものの添付が必要となります。
家族関係証明書には本人を基準に、父母・養父母・配偶者・子(養親子も含む。)が記載され、これらの特定登録事項(姓名、性別、本、生年月日、住民登録番号)が表示されています。
婚姻関係証明書
婚姻関係証明書は、婚姻に関する身分変動事項を証明するものとな、申請者自身と両親のものの添付が必要となっています。
本人の婚姻・離婚に関する事項と配偶者の姓名訂正や改名に関する事項が記載されています。
記載されている項目としては、本人の登録基準地・姓名・性別・生年月日・住民登録番号と配偶者の姓名・性別・本・生年月日・住民登録番号・婚姻及び離婚に関する証明が記載されています。
入養関係証明書
入養関係証明書は、養子縁組に関する身分変更事項を証明するものとなり、申請者ごとに添付が必要となっています。
本人、養父母、養子についての養子縁組、離縁、養子縁組の無効・取消に関する事項が記載されています。
記載されている項目としては、本人の登録基準地・姓名・性別・生年月日・住民登録番号と養父母又は養子の姓名・性別・本・生年月日・住民登録番号・入養及び罷養に関する証明が記載されています。
親養子入養関係証明書
親養子入養関係証明書は、特別養子縁組に関する身分変更事項を証明するものとなりなり、申請者ごとに添付が必要となっています。
除籍謄本
除籍謄本は、日本の戸籍と同様に親族の系譜がわかる書類となっています。帰化申請では、申請者の両親までさかのぼって取得する必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
特別永住者の方の帰化申請は、他の在留資格よりも優遇される部分も多くあるとご理解いただけたと思います。
ということは、特別永住者の方の帰化申請は簡単なのでしょうか?
確かに申請に必要な書類や審査期間について優遇されてはいますが、その他の要件については、他の在留資格の方の帰化申請と同じように厳格に審査されることに違いはありません。
帰化申請で許可を得るためには、7つの要件を満たす必要があります。
⇒詳しくはこちらのページをご覧ください。徹底ガイド 帰化の7つの要件(許可を得るための必須条件)
交通違反の回数が多かったり、納付すべき年金や税金に未納があれば、帰化の許可を得ることは難しいでしょう。
ですが、過度に心配する必要がないと思います。
優遇されているメリットは享受しつつ、帰化申請の要件を満たすように法令遵守に気を配りながらも、一般的な通常の日常生活を営んでおられれば大丈夫だと思います。
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