帰化の要件
帰化とは、その国の国籍を持っていない外国人の方が国籍の取得を希望する場合、国が許可を与えることによりその国の国籍を取得するという制度です。
日本では、帰化の許可権限を持っているのは、法務大臣となっていますが、その申請は住所地を管轄する法務局となっています。
帰化をするための一般的な要件としては、次のようなものがあります。
居住要件(国籍法第5条第1項第1号)
帰化の申請をする際までに、「引き続き5年以上」日本に住んでいることが必要です。
なお、住所は適法なものでなければなりませんので、正当な在留資格を有していなければなりません。
居住要件をもっと詳しく
帰化申請の第一の条件として、「引き続き5年以上日本に住所を有すること」があります。
帰化をするためには、申請する現在までに5年以上続けて日本に住んでいる必要がありますが、途中で中断がある場合には年数がいったんリセットされてしまいます。
例えば、中国国籍の方が日本で4年間生活し、いったん帰国して中国で1年間暮らし、あらためて日本に来日し、2年間暮らしているような状況の場合、日本での居住年数は2年間となり、4年間居住していた年数はリセットされてしまいます。
中断については、1ヶ月程度の母国への帰国などは中断にはあたりませんが、半年以上、日本を離れるような場合は、居住の中断とみなされることもありますので、注意が必要です。
居住要件が緩和されるケース
以下の場合には、帰化申請を行うために引き続き5年以上日本に住所がある必要はありません。
- 日本国民であった者の子(養子を除く)で、3年以上続けて日本に住所または居所がある人
- 日本で生まれた人で、3年以上続けて日本に住所か居所があり、父母(養父母を除く)が日本生まれの人(で現在日本に住所がある者)
- 10年以上続けて日本に居所がある人
- 日本人の配偶者で、3年以上日本に住所または居所を有し、現在も日本に住所を有している人
- 日本人の配偶者で、婚姻の日から3年を経過し、ここ1年以上日本に住所を有している人
- 日本人の子で、日本に住所がある人
- 日本人の養子で、1年以上続けて日本に住所を有し、縁組の時に本国で未成年だった人
- 元日本人で、日本に住所がある人(日本に帰化した後に日本国籍を失った人を除く)
- 日本生まれで出生の時から無国籍で、その時から今まで3年以上続けて日本に住所がある人
就学ビザ・留学ビザについて
就学ビザ・留学ビザについては、日本で勉強の後に、母国に帰国することが予定されたビザであるため、帰化申請においては、これらのビザのみでの居住については帰化要件の居住年数に含まれません。
そのため、留学生の方で帰化を希望される方は、卒業後、人文国際などの就労ビザを取得し、日本に居住していることが必要になり、就労ビザに変更後、3年以上になった時点で、初めて帰化申請を行うことができます。
例えば、
- 留学ビザ2年 人文国際ビザ3年 ⇒ 居住要件を満たす。
- 留学ビザ3年 人文国際ビザ2年 ⇒ 居住要件を満たさない。
以上の2例とも日本に来て5年を経過していますが、①は、就労ビザに変更後、3年を経過しているので、居住要件を満たしますが、②については、変更後2年しか経過していないため、帰化を行うためには、もう1年必要となります。
また、帰化申請時には、就労ビザの更新期間は最長の3年のものが必要です。
能力要件(国籍法第5条第1項第2号)
年齢が20歳以上であって、かつ、本国の法律によっても成人の年齢に達していることが必要です。
能力要件をもっと詳しく
帰化の第2の要件は、20歳以上で本国法によって能力を有することとなっています。
ただし、以下の要件のいずれかを満たすような場合はこの要件は緩和されます。
- 日本人の配偶者で、3年以上日本に住所または居所を有し、現在も日本に住所を有している人
- 日本人の配偶者で、婚姻の日から3年を経過し、ここ1年以上日本に住所を有している人
- 日本人の子で、日本に住所がある人
- 日本人の養子で、1年以上続けて日本に住所を有し、縁組の時に本国で未成年だった人
- 元日本人で、日本に住所がある人(日本に帰化した後に日本国籍を失った人を除く)
- 日本生まれで出生の時から無国籍で、その時から今まで3年以上続けて日本に住所がある人
素行要件(国籍法第5条第1項第3号)
素行が善良であることが必要です。
素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無や態様、納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮し、通常人を基準として、社会通念によって判断されることとなります。
素行要件をもっと詳しく
帰化の第3の条件は、素行が善良であることです。
この要件は、通常の日本人と比較して、素行が悪くない程度の生活を送っていれば、問題ありません。
ですが、犯罪歴や納税義務、交通違反の履歴なども審査の対象となりますので、注意が必要です。
交通違反について
交通違反については、酒気帯び運転や重度のスピード違反などの重大な違反を過去5年以内に犯している場合などは、帰化申請は難しいでしょう。
また、駐車違反などの軽度の違反であっても、繰り返し取り締まられているような場合は、やはり帰化申請にあたっては、問題となります。
犯罪歴について
犯罪歴については、ご家族に犯罪を犯した方がおられるような場合などもあると思いますが、帰化申請者本人が、直接その犯罪に関わっている様な場合でなければ、帰化申請は個人ごとの申請であるため、原則として別問題となります。
また、ご自身の犯罪歴についても、10年以上の経過があるような場合は、帰化申請を行うことができる場合もあります。
そのような場合は、申請の前に、正直に報告することが重要です。
生計要件(国籍法第5条第1項第4号)
生活に困るようなことがなく、日本で暮らしていけることが必要です。
この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので、申請者自身に収入がなくても、配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば、この条件を満たすこととなります。
生計要件をもっと詳しく
帰化申請の第4の要件は、自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができることです。
帰化申請者本人や申請者と同一世帯におられる方をあわせて生計を営める状態である必要があります。
例えば、帰化申請者本人が無職であるような場合でも、同居人に収入があり、生計を営めると判断されれば、帰化申請は可能です。
ですが、お一人で生活しておられて、無職であるような場合、よほどの資産があるような場合でないと帰化申請を行うことは難しいでしょう。
また、生計を営むということは、国の補助などなしに生活できる状態ということになりますので、生活保護の受給をうけているような場合も、帰化申請は難しいものとなります。
国籍要件(国籍法第5条第1項第5号)
帰化しようとする方は、無国籍であるか、原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。
なお、例外として、本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については、この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります。(国籍法第5条第2項)。
国籍要件をもっと詳しく
帰化申請の第5の条件は、国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきことです。
日本では二重国籍は認められていませんので、帰化が許可されて日本の国籍を取得すると、母国の国籍を喪失することが必要となります。
韓国をはじめ、多くの国では、自国民が他国へ帰化した場合、自動的に国籍が喪失することになっていますので、そういった国では特に問題はありません。
ですが、自動的に国籍の喪失が行われない国もあります。
ニュージーランドは外国の国籍を取得した後でなければ自国籍の喪失を認めていません。
ブラジル、インド、ベルギーは、日本国民との親族関係があるような場合を除き、未成年者については自国籍の喪失を認めていません。
ですので、帰化申請者の母国が、国籍についてどのような法律であるかを、事前に確認する必要があります。
憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり、主張するような者、あるいはそのような団体を結成したり、加入しているような者は帰化が許可されません。
憲法遵守要件についてもっと詳しく
帰化の第6の条件は、日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党 その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないことです。
要約すると、日本にとって危険である人は帰化できませんということになります。
まずそのような方はおられないと思いますが、現在、テロ組織や過激派に属していたり、過去に属していた方やそのような思想を持った方のの帰化は認められません。
日本語要件
法律で決められた要件ではありませんが、日本語の読み書きができることも必要です。
一応の基準として、小学校3年生程度の読み書きが出来る程度となっています。
これは、帰化すると選挙権が与えられるなど、日本人と同じ権利(義務)が得られますので、日本人と同様のことがある程度できるためには、日本語能力も当然必要となってくるために審査されることとなります。
以上が帰化の要件となりますが、
- 「自分が帰化の要件を満たしているのかわからない方」
- 「要件は満たしていそうだけれど、申請方法がわからない方」
というような方は、丁寧に相談にお答えしますので、お気軽にご相談ください。
帰化申請の必要書類
帰化許可申請に必要となる主な書類は,次のとおりですが、その他にも多くの書類が必要となる場合があります。
申請にあたっては、ほとんどの都道府県で正本と副本の2通を作成し提出する必要があります。
帰化許可申請書
帰化申請者の国籍や住所、通名などの基本的な事項を記載します。
提出の際は、正副ともに、申請者の証明写真を貼り付ける必要があります。
親族の概要書
申請者を除いて、両親、兄弟姉妹、配偶者、子、配偶者の両親などの親族関係を記載する必要があります。
作成の際には、住所地によって日本国内と国外に分けて作成します。
履歴書
帰化申請者の身分関係・住所関係・職歴等を、出生の時から空白期間のないように詳しく書く必要があります。
帰化の動機書
特別永住者資格の方や年齢が15歳未満の方の場合は必要ありませんが、それ以外の帰化申請者の場合には必要となります。
この動機書は、申請者本人が自筆で記載しなければならず、ワープロなどは不可となっています。
国籍を証する書面
帰化申請者の本国(又は在日大使館)の発行する国籍証明書を取得します。
身分関係を証する書面
帰化申請者の出生、婚姻、親族関係の証明する本国の書面を提出します。
もちろん、帰化申請者の出身国によって取得すべき書類は様々となりますが、これらの書類はすべて日本語に翻訳し、翻訳者の証明をする必要があります。
また、配偶者、子、父母、兄弟姉妹が日本人である場合には、日本の戸籍謄本も取得する必要があります。
住所を証する書面
帰化申請者の住民票謄本を取得し提出します。
同居人や配偶者、子が日本人である場合は、その方の住民票の写しも提出する必要があります。
宣誓書
日本の法律を遵守し善良な日本国民となることを宣誓する書面となります。
この書類は、帰化申請者本人が申請書類を提出する際に、担当官の前で署名押印(または拇印)を行います。
また、15歳未満の方は提出する必要はありません。
生計の概要書
同一世帯を単位として、申請の前月分の収入や支出を記載します。
また、不動産、貯蓄金等を有している場合や、高価な動産は、おおむね100万円程度以上のものを記載する必要があります。
事業の概要書
帰化申請者が個人事業又は会社経営をしている場合や会社の役員である場合に提出します。
どのような事業を行っているかや収益、主な取引先などを記載します。
在勤及び給与証明書
帰化申請者の勤務先や1か月分の給与、納税額等について証明するために、給与明細書や在勤証明書、源泉徴収票などを提出します。
納税証明書
納税を行っていることを証明するために、所得税や住民税の納税証明書を提出します。
帰化申請者が給与所得者であるか事業者であるかによって、提出する納税証明書は異なります。
その他の書類
その他にも、住所地や勤務先の地図、運転記録証明書、土地建物登記簿謄本確定申告書など、帰化申請者の状況によって、様々な書類を提出する必要があります。
また、申請者や同居人が法人の役員である場合や個人事業主である場合は、決算書や確定申告書、法人税・事業税・市民税の納税証明書など、会社員の方よりも提出する書類は多くなります。
帰化申請手続きの流れ
帰化申請の準備
帰化申請手続きは、帰化申請者本人で行うことはもちろん可能です。
ですが、帰化申請に必要な書類や申請方法を知った上で、帰化を行おうとする方はほとんどおられないと思いますので、まず最初に法務局で帰化相談を行う必要があります。
帰化申請は、帰化申請者の家族関係や生活環境によって、必要となる書類が異なってきますので、法務局で相談をした上で、必要書類を提示してもらいましょう。
帰化申請書類の作成と収集
帰化申請に必要な書類がわかったら、その書類の収集と作成に取り掛かることとなります。
提出書類には、帰化申請者本人が作成する書類と、役所などから取得する書類とかがありますが、役所などから取得する書類には、有効期限がありますので、注意が必要です。
また、外国語で記載されている証明書などは、日本語に翻訳した上で、翻訳者の住所・氏名を記載する必要があります。
帰化申請書類の提出
申請書類が揃ったら、法務局に申請を行います。
申請書類に不備などがある場合は、あらためて担当官から指示があります。
その際は、再度不備書類の訂正や収集を行い、再度、日時をあらためて、申請を行う必要があります。
申請書類が無事受付されると、受付日から数ヵ月後に、申請者ご本人への面接が行われます。
面接の内容は、提出した書類の内容を中心に行われます。
また、その折り、追加書類を指示されることもあります。
帰化の許可・不許可の裁定
最後に法務大臣の決裁を経て、帰化申請の許可・不許可が決定されます。
申請の許可、不許可にかかわらず、法務局から帰化申請者に通知があります。
また、許可された場合には官報に告示されます。
帰化申請は、おおよそ以上のような流れとなっていますが、申請から裁定が下りるまでには、半年から1年の期間が必要となります。
帰化許可後の手続き
帰化が許可されると、その旨が官報に掲示され、法務局より帰化申請者に対して帰化が許可された旨の通知がされます。
ですが、これが帰化に関する手続きの終了ではなく、この後、帰化許可後の手続きが必要となります。
この手続きは、日本の戸籍を作成する手続きとなりますので、期限内に手続きを完了させましょう。
帰化届出の流れ
帰化の許可が官報に掲載されます。日本国籍を取得したことになります。
法務局より身分証明書が交付されます。
帰化が許可されてから14日以内に市町村長宛に外国人登録証明返還手続を行います。
帰化の告示がなされた(帰化が許可された)日から1ヶ月以内に、市町村役場で帰化の届出を行います。その際、身分証明書を添付します。⇒市町村長が帰化者の戸籍を作成
帰化届出の終了
その他の手続き
その他にも銀行口座や不動産や自動車、各種免許証、許可証など名義変更が必要な場合には、それぞれの変更手続き行う必要があります。
帰化申請についてのお問合わせ
ひかり行政書士法人では、帰化申請についてのご相談や帰化申請サポートのお申込みについて、お電話・メールでのお問合わせを承っております。
帰化申請のあらゆるご相談について、お気軽にご連絡ください。
その他の許認可申請について
その他の許認可申請についてお調べの方は、ひかり行政書士法人の総合サイト「許認可.net」もぜひご覧ください。